子どもの成長をまちの大人が見守る… 商店街に生まれた海老名の名所

商店街は、昔から地域の子どもたちを見守ってきた場所でした。顔なじみの大人が子どもを気にかけたり、成長を一緒に喜んでくれたり——そんな関係性が、日常の中に自然と生まれていました。

海老名の商店街にあるフォトスタジオ「Lapin」と、コミュニティ拠点「よりみてぃ」も、そうした役割を今の形で引き継いでいます。今回は、海老名の商店街から生まれた、2つの子どもの居場所を紹介します。

予約スタート8分で満席!海老名・さくら並木商店街のフォトスタジオ「Lapin」

通いたくなる理由は「写真以上の思い出」

予約枠オープン、わずか8分で満席──。海老名に古くからある商店街の一角に、そんな大人気のフォトスタジオがあります。

海老名市東柏ケ谷にある「フォトスタジオ Lapin(ラパン)」は子どもの成長を見守るフォトスタジオ。さくら並木商店街に「Lapin La Maison」と「Lapin L'Atelier」の2店舗を構えます。

宣伝をほとんどしていないにもかかわらず、口コミだけで海老名市内はもちろん、県外からもファンが訪れる人気ぶり。なぜ、ここまで多くの家族を惹きつけるのでしょうか。オーナーでありカメラマンのMASAKIさん・KIWAさんご夫婦に話をうかがいました。

自宅から始まった小さなスタジオ

ーーLapinのスタート地点は、オーナー夫婦の自宅で開いた「おうちスタジオ」と聞いています。現在では2つのスタジオがありますが、それぞれどんな場所なのでしょうか。

KIWA

2019年にスタートした「おうちスタジオ」ですが、2024年の「Lapin La Maison」をオープンしたタイミングでクローズしました。

「Lapin La Maison」は家具やドライフラワーを置いたリビングのようなあたたかい空間です。スタジオ内にはお子さまの感性を刺激するような仕掛けや小物を散りばめています。さまざまなアイテムに興味を示すその表情も、大切に残していきたいんです。

© 2025 Photo studio Lapin

「Lapin La Maison」

一方で、2026年1月にオープンした「Lapin L'Atelier」は白一色のまっさらな空間。季節の生花を使って撮影することも特徴のひとつです。子どもを主役にしたアート作品のような撮影ができます。

「Lapin L'Atelier」

MASAKI

スタジオによってまったく違う表情が残せるんです。

リピーターは約8割!家族の成長に寄り添えることが喜びに

ーーLapinにはどのようなお客様が多いのでしょうか?

KIWA

ほとんどが子どものいるご家族です。ニューボーンフォト、七五三などの記念日はもちろん、普段の笑顔や仕草を撮る“なんでもない日”の撮影を希望される方も多くいらっしゃいますね。

MASAKI

ありがたいことに、約8割がリピーターさんです。マタニティフォトから通ってくれている方はもう6年近くになるので……お子さんの成長を見守っている親戚のような感覚になります。

ーーお客様はどのあたりから来ているんですか?

KIWA

海老名市内はもちろんですが、神奈川県全域、さらには関東圏からも来てくださっています。宣伝らしい宣伝はほとんどしていないので、ありがたいことに口コミやSNSを見て海老名まで来てくださるようです。

カメラマンやメイク、着付けなどをチームでおこなう

ーーそんなに遠方から海老名にいらっしゃるなんて、すごいですね。「Lapin」といえば、予約が取れない人気のスタジオという印象があります。

KIWA

最近では予約枠を解放してから満席になるまで8分でした。予約スタートをたくさんの方が待ってくださっているようで……なんだか申し訳ない気持ちです。

ーーそれは想像以上でした!2026年1月に新しいスタジオもオープンしたので、これからはもう少し予約枠も増えるのでしょうか。

MASAKI

多少は増えるのですが、やはりいつでも好きな時に…というのは難しいかもしれません。本当はもっと枠を増やして多くの方に来てもらいたい気持ちもあるのですが、家族の時間を大切にしながら無理のない範囲で続けていくのが、今の私たちにとってのベストだと思っています。

KIWA

ありがたいことに、そんな私たちのスタンスをあたたかく見守ってくださるお客様が多いんです。家族との時間を大切にする価値観に共感していただけているのかもしれません。

ーー予約がすぐ埋まってしまう人気ぶりの裏側には、ご夫婦のライフスタイルと、それに共感して応援するお客様の存在もあるんですね。

「写真にはその日の声まで写る」──Lapinの撮影ポリシー

ーー撮影現場を見学したのですが、とてもにぎやかで驚きました! お子様の注意を引くために大げさな声を上げるわけではなく、まるで遊んでいるような雰囲気で。

MASAKI

写真って、見返した時にその時その場の音までセットで保存されていると思っているんです。「この時あんなふうに泣いていたな」とか「みんなで笑ったな」とか……。だから撮影中の“体験”まで大切にしています。

「Lapin L'Atelier」で撮影中

MASAKI

写真撮影って決して安くはないので、テーマパークに出かけたくらいのクオリティの思い出にしたいと考えているんです。あとは、ただ単純に僕たちが子どもが好きだというのがありますね。

撮影中も笑いは絶えることがない

KIWA

泣いていても機嫌が悪くても、どんな時も子どもってかわいいですよね。私たちはそう考えて撮影しているので、あえて笑わせようとはしないんですけど、泣いたまま終わることはほぼないですね。

© 2025 Photo studio Lapin

商店街を歩く人たちが、自然と声をかけてくれる場所

ーースタジオがあるさくら並木商店街は、古くからこの地域に親しまれてきた商店街ですよね。特に「Lapin L'Atelier」はガラス張りの真っ白な空間なので、不思議に思われる人も多いのではないでしょうか?

KIWA

看板を出していないので「ここ何のお店?」とか「これから何ができるの?」と聞かれることも少なくありません。「なかには子どもばかりじゃなくてシニア向けのプランも作ってよ〜」と言ってくださる方もいますね。

商店街は地域の人の散歩道になっている

MASAKI

ゆくゆくはこの商店街で春に開催される桜祭りなどの地域の行事にもかかわっていけたらいいなと思っています。

フォトスタジオ Lapinが「予約が取れない」と言われるほど支持される理由は、技術の高さ以上に、“写真の中にその日の体験ごと閉じ込めたい”という信念にあるのかもしれません。
泣いた声、笑った瞬間、親子のかけあい──。撮影はただの記録ではなく、家族にとっての“思い出づくりの時間”。そんなかけがえのないひとときを求めて、家族はまたラパンを訪れるのでしょう。

オーナーであるMASAKIさんの頭の中には、すでにこれからの構想がいくつも生まれているとのこと。子育てと仕事を両立する現在のライフステージを踏まえ、焦らず少しずつ形にしていく予定だと話していました。

Photo studio Lapin

Lapin La Maison
​神奈川県海老名市東柏ケ谷2丁目9-17 1F

Lapin L'Atelier
神奈川県海老名市東柏ケ谷2丁目12-41 太陽ビル1F 101

https://www.photostudiolapin.com/

スタジオオーナーでカメラマンのMASAKIさんとKIWAさん

なぜこんなところにバスが!?いつでも誰でも寄り道できる地域の居場所「よりみてぃ」学生のひらめきを地域の大人がサポートした結果…

道路沿いを歩いていると、ふと視界に1台のバスが目に入ります。バスが置かれているのはバス停でも車庫でもない、商店街の一角。かつて海老名の街を走っていた緑色の車体は、市民にとって見慣れた存在でありながら、どこか懐かしさも感じさせます。

このバスが置かれている場所が、国分寺台中央商店街の一角にあるコミュニティ拠点「よりみてぃ」です。

なぜここにバスが置かれているのか、そして何をする場所なのか……。そこには、海老名という街だからこそ実現した、少し変わった取り組みがありました。

きっかけは、80万円の中古バス

ーー「よりみてぃ」のシンボルになっているバスですが、ここにバスを置こうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

中峰

中古車販売店で中古のバスが80万円で売られているのを見かけたのがきっかけでした。当時はコロナ禍で『特別定額給付金』10万円が給付された時期です。「協力者を8人集めてこのバスを買ったら、何かおもしろいことができるのでは?」と思ったんです。

ーーどんなメンバーでスタートしたのでしょう?

中峰

僕を含め、主に5人の学生です。高校2年生から大学3年生まで年齢もさまざまでした。幸か不幸か、コロナ禍で授業はオンライン、サークル活動も思うようにできず、時間だけはたくさんあったんです。

ーーここにあるのは当時中古車販売店にあったバスということですか?

中峰

いいえ、実はそれとは別のバスです。せっかく置くなら、この地域に馴染みのあるバスにしたいと思い直しました。

しかし「バスを置く」というプロジェクトは思っていた以上に大掛かりで……。実現するにはたくさんの人の力を借りました。まず、立ち上げメンバーが海老名市にある学童「Anchor(アンカー)」のスタッフだったこともあり、学童保育「Anchor」を運営するNPO法人コンパスの協力を得ることができたんです。

そのおかげで学生だった僕たちの「バスを置く」という計画は現実味を帯びました。熱意あふれる企画書を作って「こういう理由でバスを置きたいです!」と地域のバス会社に交渉しました。

学生の企画を支えたのは地元の大人たち

ーー実際にバスを置くとなると、苦労も多かったのでは?

中峰

バスを譲渡してもらうにあたってたくさんの課題がありました。まず、置いて終わりではなく、廃れることなく在り続ける必要があります。また、現実的な課題として地盤の強化や電気工事が必要でした。これは自分たち学生が自力で解決できるものではありません。

ーーでは、どのようにクリアしたのでしょうか。

中峰

地元の大人たちが手を貸してくれたんです。地元の土建屋さんが地盤や電気を整えてくれて、工務店さんが内装工事を手伝ってくれて、電気屋さんがエアコンを取り付けてくれました。本当にヒーローのように見えました!

車内に取り付けた照明

中峰

さまざまな条件をクリアして、バスが納車されたのはまだ寒い3月でした。嬉しさのあまり、メンバー全員でそのままバスに泊まったほどです。凍えるような寒さでしたが「やっとここまで来た」という実感があり、忘れられない夜になりました。

そこから内装や外装を整えて、1年後にオープンとなりました。

バスの中にはオープン当時の写真も飾られている

バスの中は駄菓子屋であり、みんなの居場所

ーー現在、このバスはどのように使われているのですか?

中峰

季節ごとに不定期でイベントを開催するほか、普段は駄菓子屋になっています。オープンする日や時間は、あえて決めていません。僕たちの記憶にある駄菓子屋って「いつ開いているかわからない」存在だったんです。シャッターが少し開いていて、中に声をかけたら開けてくれることがあったり……そんな空気感を大切にしています。

中峰

ここもそのような場所で、地域の子どもたちは僕を見つけると「今日お菓子買える?」と声をかけてくれます。それでお店がオープンするのです。

地域にあった中華料理店から譲り受けた看板

ーー中はバスだった時の様子を残しつつ、思わぬ形にリフォームされているのですね。コタツがあるなんて不思議な光景です。

中峰

今は冬なのでこたつを出しています。バスの装飾は残しつつ、中では駄菓子を食べたりのんびり過ごしたりできるように改装しました。もちろん運転席に座って、普段は触れないスイッチを操作することもできて、実は大人の方も密かに楽しんでくれています。

後部座席に置かれたこたつ

地域に支えられ、地域にひらかれた場所に

ーー「よりみてぃ」は、地域にとってどんな存在になっていると感じますか?

中峰

立ち上げの段階から、地域の方に本当に支えられてきました。海老名市も応援してくれていて、少しずつですが地域に根付いてきた実感があります。

「よりみてぃ」という名前は、「よりみち」×「コミュニティ」を掛け合わせた言葉です。その名の通り、会社や学校と家のほかに、立ち寄れる居場所という意味を持つのですが、実は人生の中で「よりみち」のような時間があってもいいよね?という思いも込められています。学校に行かない日があっても、一般的なレールから外れたことをする時間があっても、それを否定しなくていい。そんな思いが、この名前の背景にあります。

中峰

目的がなくても、用事がなくても、「なんとなく寄っていい場所」があること。それが、この街にとっての小さな安心につながっていればうれしいですね。

学生のアイデアから始まったこの場所は、地域の大人たちの協力を受けながら、少しずつ形を整えてきました。子どもの居場所としてだけでなく、シニア層やママたちなど、さまざまな世代が自然に関われる場を目指し、日々試行錯誤が続いています。

これから先も、街の変化や声に耳を傾けながら、できることを少しずつ増やし「よりみてぃ」は進化を重ねていくのでしょう。

よりみてぃ
神奈川県海老名市国分寺台2-11-22

立ち上げ以降、現在も「よりみてぃ」の運営に携わる中峰さん


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