辻 正昭 プロフィール
1955年徳島市生まれ。1991年関西グラス・アート展に入賞。1995年無機質なガラスへの同化(assimilation)を基本テーマに制作を始め、初個展「glass.透明に閉じて在るために…」を開催。その後、16 年間に渡り個展を開催している。作品は北海道洞爺湖ウィンザーホテル洞爺、羽田第一旅客ターミナル、みなとみらい21、星のや台湾リゾートホテル、リーフィアタワー海老名アクロスコート・ブリスコートなどでガラスモニュメントを制作。
ViNA GARDENS オフィスエントランスホールに展示された辻さんのガラスアート『Phase formation』
——辻さんがガラスを使ったアート作品を創作するようになった経緯からお聞かせください。
故郷である徳島の高等専門学校機械工学科を卒業した後、25歳から独学でガラスアートを始めました。40歳のとき、東京と徳島で初めて開催してから、16年間に渡って続けた個展や展示会が、現在の活動の根幹となっています。
その間に、大塚国際美術館(徳島県鳴門市)で制作した全長40mのガラスパーテーションや、2008年に洞爺湖サミットが開かれたザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパ(北海道虻田郡)のロビーに展示されるガラスモニュメント、そしてリーフィアタワー海老名アクロスコートの“Mental scenery”、ブリスコートの“風”という2つのアート作品など、各地のホテルや病院、マンションなどに展示する作品を制作してきました。
——辻さんの作品の特徴は、どのようなものなのでしょうか。
私が個展で行ってきたのは「インスタレーション」、つまりオブジェ単体の作品ではなく、ガラスと光や音楽を融合させて、空間全体をアートとする表現手法です。
これは1997年に古い酒蔵で開催した個展で、4m×8mのガラスの板をハンマーで割り、積み重ねていきながら「ガラスの絨毯」のような作品に仕上げるという実験的な表現を行なったことがきっかけでした。地元のミュージシャンが奏でる音楽とともに私がガラスをハンマーで一心不乱に割る前半と、出来上がった作品にハロゲンライトや和ろうそくの光を当て、ガラスに反射して複雑に変化する光の様を表現する後半の2部構成で組み立てました。制作の最終工程は一般にも公開し、大きな反響を呼びました。
のちにこのとき撮影された映像が中国でも放映され、それを観た中国政府関係者から日中友好条約締結25周年記念企画展としてインスタレーションを行なってほしいと依頼を受けて、上海で行なったこともあります。
私の制作の根底にあるのは、ガラスの「美しさ」に気づいてもらいたいという想いです。様々な建物にはめ込まれ、雨風を防ぐ実用的な建材としての役割を果たしているガラスですが、割れた破片のエメラルド色に輝く断面や、そこに反射して揺らめく神秘的な光など、「便利さ」の裏で忘れられがちな「美しさ」を持った芸術素材でもあります。その魅力を多くの人に知ってもらい、観て、感じて、癒されてもらいたいと思っています。
「インスタレーション」と呼ばれる、ガラスアートが置かれる空間全体を芸術品として創造するのが辻さんの手法
——ViNA GARDENS オフィスエントランスに展示された『Phase formation』という作品は、どのような過程で作り込んでいったのですか。
どの作品を作るときでも、作品が置かれる建物の図面と建物自体のコンセプトをじっくりと読み込み、設置場所の空気を感じるために現地に足を運んで、設計者が表現した想いを汲み取る作業から始めます。それを反映させたうえで、自分なりの解釈を重ねながら、パソコンで精密なデザインに落とし込んでいきます。今回の制作でも同じような手順を踏みながら、1ヶ月ほどの時間をかけてデザインを作成しました。
——作品のテーマや特徴をご説明いただけますか。
一番考えたのは「緑や水の豊かな環境に、人が集い、憩う」というViNA GARDENSのコンセプトを、どう表現しようかということでした。
そこで着目したのが、海老名の特徴的な地形です。海老名は相模川の流れによって形成された階段状の「河岸段丘」に形成された街です。その地層を真上からくり抜いたら、美しい水と、堆積した土壌の層がタワー状に積み上がるのではと考えました。これを、水をガラスに、地層を大理石や御影石に置き換えて作品にしようと思いついたのです。
複数のタワーを並べたのは、人が集い都市化する海老名の街を再現するためです。また一つの作品を単にポンと置くのではなく、それが置かれた空間とのコラボレーションにより「憩い」を感じてもらうために、制作中に流していたモーツァルトの曲の音階をオブジェの高さや配置で表現しました。
——制作で、苦労した点はどのようなところでしたか。
一番考えたのは「緑や水の豊かな環境に、人が集い、憩う」というViNA GARDENSのコンセプトを、どう表現しようかということでした。
ガラスの層は、約600枚のガラス板を特殊なボンドで接着しながら重ねて作られています。水を表現するために、一枚一枚のガラスの板には細かな気泡状の割れを手作業でつけているのですが、その制作の過程で意図していない筋が入ってしまうとすべてやり直しになってしまいます。この作業には、大変な集中力と忍耐力を要しました。もちろん、重いガラスや大理石・御影石を運んだり、積んだりといった作業は、それだけでも大変でした。
約600枚ものガラス板を積み重ねてオブジェを創造しています
地層内の地下水に見立てたガラスには、手作業で刻まれた細かな気泡の筋が見えます
——苦労の末に出来上がった作品の、どこに注目して見てもらいたいですか。
ガラスに入れた気泡により、入ってきた光が乱反射してキラキラと輝きます。そのきらめきは、自然光が降り注ぐ昼間と、ライトアップされた夜間とではまったく別のものになります。その違いを、ぜひ実際に目で見比べて感じてもらいたいですね。
——辻さんが感じる、ViNA GARDENSオフィスの印象はどのようなものですか。
発展著しい海老名の街の新しい風景になるような近代的で洗練されたデザイン。駅に直結した便利な立地と、開放的でゆとりあるオフィス空間は、ここで働く方たちに大きな活力や想像力を与えてくれることと思います。
——このViNA GARDENSオフィスに、どんな未来を期待しますか。
海老名には、文化の風を感じさせる街として、まちづくりのお手本になる都市であってほしいと思っています。そのランドマークとなる建物ですから、ViNA GARDENSもそんな文化の発信地になってもらいたいと期待しています。
以前私は、オーストリアのウィーンに滞在した際、地元の知り合いに誘われてあるコンサートに出かけました。それはコンサートホールで催されるものではなく、学校の建物や公共施設のホールを利用し、地域の音大生がクラシックを演奏する週末の演奏会で、その空間に身を置くだけでもとても豊かな気分になれたことを覚えています。
私はこの作品の制作中に、ViNA GARDENSオフィスエントランスの真ん中に立ち、手を叩いて残響音を確かめてみたことがあります。とてもよい響きがしました。 この場に置かれる作品を制作した者としてぜひ提案したいのは、私がウィーンで体験したようなささやかな演奏会を、定期的に開催してみてはというものです。 大々的に行うのではなく、さりげない日常の風景として弦楽四重奏がこの空間に流れていたら、どんなにか素敵だと思います。
そんな光景の1つのピースとして、私の作品がみなさんに愛されるのであれば、これほど幸せなことはありません。
1955年徳島市生まれ。1991年関西グラス・アート展に入賞。1995年無機質なガラスへの同化(assimilation)を基本テーマに制作を始め、初個展「glass.透明に閉じて在るために…」を開催。その後、16 年間に渡り個展を開催している。作品は北海道洞爺湖ウィンザーホテル洞爺、羽田第一旅客ターミナル、みなとみらい21、星のや台湾リゾートホテル、リーフィアタワー海老名アクロスコート・ブリスコートなどでガラスモニュメントを制作。
——長谷川さんが芸術の世界を志した理由や、これまで手掛けられた作品について教えてください。
私はもともと美術を専門に学んだわけではなく、いわゆる芸術家と呼ばれる方々のように「美」をつきつめるようなタイプの人間ではありませんでした。それよりも、アートというツールを使って、社会や自然とのつながりを表現する活動がしたくて、様々なプロジェクトを実現してきました。
例えば2003年にJR札幌駅の駅ビルに設置した『coins』という作品は、4種類の野生動物の形を模した募金ケースをレリーフとして壁に取り付けたものですが、そこに人々が募金をすることで動物にコインによるドット柄がつき、全身に色がついたら野生動物の保護や共存のために活動している団体に寄付される仕組みにしました。
コインズ Coins
JPタワー札幌ステラプレカス東モール 6階
また2011年に横浜・みなとみらいで制作した『プランクトン』という作品には、小さな生物ながらも、地球上の約半分の酸素を作り出しているプランクトンにもっと目を向けて、自然の偉大さや不思議さを感じてもらいたいという意図を込めています。
プランクトン
みなとみらいグランドセントラルタワー 屋外
いずれの作品にも「人間も自然の一部という事実を、普段の何気ない生活の中で確認してもらいたい」というメッセージが込められており、見落とされがちな命の存在感や偉大さをアートで表現することが私のテーマとなっています。
——今回のViNA GARDENSオフィス・サウスプロムナードに設置された作品のコンセプトについて、お聞かせください。
まず小田急電鉄さんからのご依頼ということもあり「鉄道」「旅」という要素と関係したものにしようという意図がありました。そこで考えたのが、旅の道中で目に焼き付いた様々な「光」を形にしようということでした。
光というのは、旅先からお土産のように持ち帰ることができないものですが、これまでの旅のシーンを振り返ると、印象的な「光の光景」が自分の中にいつまでも残っています。それをアート作品として具現化することが、この作品のコンセプトになっています。
——「人間も自然の一部」を表現する長谷川さんのテーマは、今回の作品にどのように反映されていますか。
私は東京から茅ヶ崎方面に車で出かけることが多いのですが、その際、海老名のあたりを通行すると、一層自然が豊かになるという印象があります。都心から程よい距離にありながらも、自然に囲まれた街。そんな海老名の魅力に、そこで暮らしている人たちに気づいてもらいたいという想いを込めています。
今回の制作に携わる前に、リーフィアタワー海老名ブリスコート・アクロスコートに設置する作品を手掛けたのですが、その際には地域住民の方々と周辺を散策し、植物や地面など身の回りの自然から不思議な形を見つけるワークショップを行いました。そこで作られた版画をもとに、「トンボ」「松ぼっくり」という石の彫刻作品を制作して、身の回りの見落とされがちな小さな自然にフォーカスを当てたのです。
トンボ
松ぼっくり
オフィス・サウスプロムナードに設置した作品でも、身近な自然の中で印象的な光の風景をブロンズ像で表現しています。木々の間から溢れる光を形にした「木漏れ日」、蜘蛛の巣についた水滴を模した「朝霧」、冬の寒い朝の水たまりをモチーフにした「薄氷」など、どれも意識的に目を向ければ気がつく、身の回りの自然で発見できるワンシーンです。この小道を通る人たちに、身近な自然を発見する楽しさ、美しさに気がついてもらえたらと思っています。
木漏れ日
朝霧
薄氷
天気雨
水光
波紋
——作品を制作するうえで、苦心した点はどこでしたか。
「光」という、形のないものを形にすることですかね。形がないからといって、あまり抽象的なものにしてしまうと見る人に制作の意図が伝わりません。それを解決する意味でも、磨くとキラキラと光り、薬品を使用することで暗くくすませることもできるブロンズという素材を選びました。
光を表現するには、明と暗、そしてその中間にあるグラデーションを使い分ける必要があります。今回の作品の素材として、またオフィスの建物脇でありながらも、地域住民の散歩道にもなるという立地の特性を考え、適度な格式と親しみやすさを感じさせるブロンズは、素材としては最適なチョイスでした。
もちろん、細い部分の強度を保つ手法や、小さなお子さんが触れたとしても怪我をしない安全の確保という点では、細心の注意を払って制作を進めました。
——長谷川さんが海老名という街に描く未来図や理想の光景は、どのようなものでしょうか。
駅前の再開発が進み、海老名はとても発展が著しい街として、これからもっと注目されていくと思います。新しい人たちがこの地域で暮らし、新しい文化が生まれていくのは、街としてプラスなことであるのは間違いないでしょう。
ただその一方で、これまで培われた地域の特性や歴史が色褪せてしまうのはもったいないです。新しいものと、もともとある大切なものをうまく融合させていくことができれば、海老名はもっと魅力的な街になっていくと思います。その一つが、海老名に残る豊かな自然です。新しい街の開発が進んだとしても、小さな自然の営みが残る、優しい街であってほしいと願っています。
——最後に、長谷川さんから、作品をご覧になるみなさまへのメッセージをいただけますか。
オフィスに通うみなさまは、忙しい毎日を過ごしている方も多いのではないでしょうか。時には一旦その場から離れ、癒しを求めて身の回りの小さな自然に目を向ける時間をもつのもよいのではないでしょうか。「人間も自然の一部として生きている」という気づきに、私の作品が役立つのであれば嬉しいです。
1972年北海道生まれ。社会学、プロダクトデザインを学んだ後、アーティストとして活動を始める。社会とのつながり、自然とのつながりを皆で分かち合いたいとの想いで様々なプロジェクトを行う。
——大橋さんのカメラマンとしてのご経歴を教えてください。
中学生、高校生時代はいわゆる「乗り鉄」。鉄道好きの祖父の影響で各地のいろいろな鉄道に乗りに行ったり、鉄道博物館に通ったりしながら、鉄道の魅力にどっぷりとはまっていました。
大学に入ってからは写真の勉強を始め、本格的に鉄道の撮影をするようになりました。そこで考えたのは「いろいろな鉄道の写真を撮ることも楽しいが、何か一つ、自分のメインとなるフィールドを持ちたい」ということ。自分にしか撮ることができない作品を求めて、特別な路線を決めたいなと思いました。
——「自分にとっての特別な路線」というのが、箱根登山鉄道だったわけですね。
厚木の大学に通っていた当時、箱根は足を伸ばして行きやすい場所でした。森の中を箱根登山鉄道の赤い車両がゆっくりと走る様は、被写体としてのインパクトは抜群。レトロな車体にも惹きつけられ、新しい撮影スポットを探しに週3回ほど箱根に通っていました。
そんなことを繰り返しているうちに、箱根登山鉄道をモチーフにした写真が増えたことから、自分で写真展を企画、主催することに。さらにこれがきっかけとなって、箱根登山鉄道本社の方にご挨拶をする機会を得たり、ポスターの撮影を頼まれたりと、だんだんと趣味の世界からカメラマンという職業の世界へとシフトチェンジしていったというのが、これまでの経緯です。
今は箱根登山鉄道、箱根ロープウェイ、箱根観光船、箱根登山バスの公式サイト「箱根ナビ」に写真を提供するカメラマンとして、鉄道をはじめとする乗り物を使って、箱根でどう楽しく遊ぶかを伝える活動を中心に展開しています。
大橋さんが撮影した箱根登山鉄道
箱根登山鉄道の撮影を中心に、乗り物を通じて箱根の魅力を伝えています
——ViNA GARDENS オフィスのメインアプローチに展示されたロマンスカーの写真は、どのような状況で撮影されたものなのですか。
この写真はもともと、ロマンスカーミュージアムの竣工写真を撮るプロジェクトの一環として撮影したものです。
ロマンスカーミュージアムにロマンスカーの旧車両が搬入される瞬間を撮りました。赤い車体になってからは2代目で、ロマンスカーの象徴となっている展望席が初めて採用されたことからファンの間では「伝説の車両」と呼ばれている一台です。
搬入は夜中の1時半頃に行われ、私はその様子を見渡せるデッキで待機しました。そのとき、「伝説の車両」以上に私が惹きつけられたのが、カメラ片手にロマンスカーに近寄る鉄道ファンたちの熱意です。一台の車両と、それを愛おしむように取り囲むファンとのつながりを写真に収めたくて、あえて画角を広めにして撮影しました。
——「伝説のロマンスカー」が被写体のようで、実はその周りでカメラを構えていた鉄道ファンもまたこの写真の主役だったのですね。
そうです。まるで憧れの車体に吸い寄せられるように近寄り、一心不乱にシャッターを押す姿が「誰にも撮れない自分だけの一枚」を求めて箱根に通っていた自分の姿と重なったのかもしれません。一台の鉄道が、これだけ多くのファンに愛されている。その鉄道とファンとの交流を写真で伝えたいと思いました。
——ViNA GARDENS オフィスメインアプローチでのロマンスカーの写真展示については、今後も続いていくのですか。
写真を変えながら、来年の6月までロマンスカー関連の写真を展示することは決まっています。次はどの写真を飾ろうか、現在写真の選別を行っている最中です。
大橋さんが撮影したロマンスカーミュージアム
——大橋さんが考える、海老名という街のイメージはどのようなものですか。
海老名に住んだことはないのですが、周りから見る街の印象としては、若者を中心に年々賑わいが増している感じがします。またこれからも、もっと活気が高まっていく予感を感じさせる街だと思っています。
それと鉄道ファンとして、小田急電鉄という鉄道会社にとても愛着を感じています。実は学生時代、相模大野駅で鉄道員のアルバイトを経験し、ほんの短い間ですが小田急電鉄の一員になれた時期がありました。ロマンスカーの発車の手伝いもしたので、私にとっては夢が一つ叶ったような経験だったのですが、そのときに感じたのは、小田急電鉄に関わる方々の愛情の深さ。ホームでのお客様誘導、ていねいな接客をみるにつけ、小田急電鉄という鉄道を愛しているからこそ、それをご利用くださるお客様にこんなにも暖かく、思いやりをもって接することができるのだろうなと感じました。
そんな小田急線の主要駅である海老名駅は、鉄道員のみなさんの愛に満ちた、特別な駅だと思っています。
——最後に、大橋さんの写真が展示されたメインアプローチを通り職場へ向かう、ViNA GARDENS オフィスで働くみなさんへ、メッセージをいただけますか。
ViNA GARDENS オフィスは発展を続ける海老名の核となる建物であり、ここで働くみなさんの活力が、新しい海老名の広がりをリードしていくのだと思います。でも、もし忙しい毎日に疲れたときには、私の写真をみてロマンスカーに乗ってのんびりと旅をするイメージを膨らませてもらえたら嬉しいです。
また、鉄道ファンの1人としては、海老名はロマンスカーミュージアムがある街であり、小田急電鉄を象徴する車両であるロマンスカーとの関わりの深い場所であります。その誇りとともに、海老名に愛着をもってもらえたらと思います。
1996 年滋賀県生まれ。2018 年東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。卒業制作として箱根登山鉄道写真集「Tozan」を出版。在学中より箱根登山鉄道のポスター等の写真を多数撮影し、2021 年より小田急箱根 HD「箱根ナビ」Instagram フォトグラファー。2022年7 月にキヤノンギャラリー銀座、同年10月にロマンスカーミュージアムにて個展開催。
https://www.youtube.com/watch?v=byrBtT_ITKE"
—早川さんのこれまでの作品や、アートに関するテーマをお聞かせください。
「アート・デザイン」と「教育」というキーワードを軸に、それらが融合する領域において様々な活動を行ってきました。
映像作家としては、手描きアニメーションとデジタル技術を組み合わせた独自の手法を用いて有機的な動きの映像作品を制作し、4K、8K、16K以上といった高解像度領域でのアニメーション表現の可能性を探求しています。2008年には世界初の4K手描きアニメーション、2010年には世界初の8K手描きアニメーションを制作し、国内外での展示・上映、受賞、コラボレーション、講演、ワークショップなどを精力的に行なってきました。
しかし、2010年ごろから体調を崩し、徐々に創作が困難な状況になりました。2017年には双極性障害II型(躁鬱病)、ADHD(発達障害)、ASD(アスペルガー/自閉症スペクトラム・発達障害)という精神的な病であると診断され、現在は闘病しながらも活動しています。
病気や障がいを抱えた状態での創作は精神的にも体力的にも厳しいのですが、それでも「せっかく病気になったのだから、その状況でしかできない面白い人生を」という気持ちもあります。自分と同じ病気や障がいと戦う方々やその周辺で支える方々に笑顔をもたらすために、新しいアニメーション表現を開拓するために、そしてこれまでお世話になった多くの方々に恩返しするために、地元の山形で私なりの創作活動を続けています。
これまでの早川さんの作品
「KASHIKOKIMONO」:https://youtu.be/Hc6RXQcAXCE
「塵芥集」:https://youtu.be/fs8NEEWSmuY
「東の果ての古い森」:https://youtu.be/jMmyVUtBw50
——海老名という街と印象はどのようなものですか。
10年ほど前に横浜に住んでいたことがあり、当時、助手として働いていた大学へ向かう際に海老名駅を通っていました。
その頃はちょうど体調が悪くなり始めた時期で、都会での生活を思い返すと辛いこともあるのですが、ただ海老名に関しては「癒しの力」がある街だという印象があります。のどかな畑や田んぼの中にいきなり未来都市が現れるような感覚。都会と郊外のハイブリッドのような街。頑張って働いて疲れた心と体を、その豊かな環境が癒してくれる希望のようなものを感じさせる街だと思っています。あるいは、海老名がそんな街であってほしいという私の願いが強いのかもしれません。
——早川さんが抱かれた海老名の街のイメージは、今回の作品にどのように反映されていますか。
そんな海老名の「癒しの力」をテーマに据えて、アート作品として表現したいと思いました。事前に小田急不動産さんが挙げたコンセプトに「水」というワードがあり、「癒し/リフレッシュ」と「水の流動性」という2つの要素を掛け合わせたものにしようというアイデアが浮かんだのです。
そこでインスパイアされたのが、リーフィアタワー海老名ブリスコートに設置されている、水をモチーフとした彫刻の数々でした。水の彫刻は、水を抽象化した形が創造されているもので、その作家たちが水をどのように抽象化し彫刻に落とし込んでいるかをリサーチし、その過程を想像して、今回の作品に応用しようと考えたのです。
早川さんが発想の参考にしたというリーフィアタワー海老名の水の彫刻(一部)
それを参考にできあがった作品は、私なりの感性で頭に描いた水の彫刻を流動的なアニメーションとして表現したものです。青く彩られた水の緩急のある動きを見て、一生懸命頑張った結果、疲れ、傷ついた心を癒してくれる作品にしたいという私の思いが伝わる映像に仕上がっていれば嬉しいです。
時間により、色合いを変化させながらも流れ続ける水を表現しています
——早川さんの作品が展示される、ViNA GARDENSオフィスに対する想いについて聞かせてください。
私が作品に込めた「一生懸命頑張った結果、疲れ、傷ついた人を癒してくれる場所」というイメージを、そのまま建物として具現化したビルであってもらいたいと思っています。
たくさんの人たちが働く環境として建築される訳ですから、中には仕事がうまくいかずに心が疲弊してしまう人もいるかもしれません。そんな方たちが一度疲れた心を癒して、また新しい目標に向かってチャレンジできるような空間であってもらいたいと思っています。これは、今病を抱えながらも新たな作品づくりにチャレンジし続けている、私自身へのエールや祈りのようなものであるかもしれません。
——最後に、海老名という街の将来像や、こんな街になってもらいたいという理想像はありますか。
コロナ禍の影響で、都会に固執することなく、自分の好きな場所で働き生活するという思考が強まっています。便利な生活を営む環境があり、豊かな自然にも恵まれ、そして都心へのアクセスも良い海老名は、多くの人を魅了する新たな生活の場として、今後さらに注目されるのではないでしょうか。
これからの人生に様々な夢や前向きな考えを持った方たちが、自分らしく生きる土地として、海老名が発展していけばいいと思っています。いつまでも、たくさんの頑張る人を癒してくれる街であってほしいと願っています。
1979年、山形県天童市生まれ。高解像度抽象手描きアニメーションアーティスト。2008年、世界初の4K手描きアニメーション作品を制作。現在も、4Kや8Kよりもさらに精細なアニメーション作品制作の実験を続けている。そして現在とある病気で闘病生活。療養生活を支えてくれる家族や励ましてくれる友達に感謝しつつ、病気でいろいろあるからこそ体験できる人生を謳歌中。
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