「ViNA GARDENS(ビナガーデンズ)」が誕生することにより、さらにつながり、輝いていく海老名の未来。子どもたちから高齢者まで、すべての世代が心地よく暮らせる未来のための取り組みとは? 内野 優海老名市長と、小田急電鉄 星野 晃司取締役社長が語り合うスペシャル対談の後編をお届けします。
【2017年9月14日(木)対談】
前編はこちら
安全・安心を第一に、子どもたちを育む環境を
星野
さきほど、新たに開発される海老名駅駅間地区、「ViNA GARDENS(ビナガーデンズ)」の開発コンセプト「憩う・くらす・育む」についてお話しました。一方で、海老名市が積極的に進めている取り組みにはどのようなものがあるでしょうか。
内野
市としては、やはり安全・安心への取り組みです。もともと海老名市では安全対策に力を入れていますが、さらに防犯対策として、県に対して海老名駅西口地区に交番設置を要望するとともに、交番設置までの暫定措置として、安全安心ステーションの設置を計画しています。
星野
我々ももちろん安全・安心が第一ですから、ここでまさしく小田急電鉄と海老名市がタッグを組むことで、日本一、安全・安心なまちが生まれると思います。開発コンセプトに謳っている「憩う」空間として、自然豊かな広場状のスペースや、車道と分離した歩道を整備していきますが、これによってお子さんたちが安全・安心に遊び回ることができるスペースも創出されます。
内野
子どもたちが増えることにともない、安全対策はもちろんですが、保育所の待機児童解消も課題です。2015年10月に誕生した「扇町」には、現在約600人の方が住んでいますが、非常に若い世代が多いまちです。このため、駅間地区に新たにお住まいいただく方々においても、保育需要や小中学校の教室不足への対応が必要であると考えています。2018年4月には、駅間地区に1園、上郷地区に認可化へ移行する園の新設が予定されており、引き続き、官民が協力して、待機児童解消に向け取り組んでいきます。
また、小中学校の教室数の不足については、特別教室を普通教室に転用することや、学区の見直しなども検討する必要があると考えています。
星野
保育所、小中学校ともに課題を解決して、子どもたちを育む環境を充実させていきたいですね。駅間地区に新設する保育施設は、現状でも高まっている駅近くの保育園ニーズにお応えできるよう商業棟「テラス」1階に開業する予定です。また、前述したホテル・フィットネスクラブをはじめとする地域住民の皆さんのための生活サービス施設の整備によって、子育て世代だけでなく、幅広い世代の方がこのエリアで豊かな時間を過ごせると思います。
内野
高齢者の皆さんにとってもいきいきと暮らせるまちでありたいですね。
星野
くらしエリアにはサービス付き高齢者向け住宅の設置を計画しています。また、賑わい創出エリア内の生活サービス施設では、暮らしの利便性を向上させる機能を集約することにより、駅前においてワンストップでサービスを受けることが可能となります。
あらゆる世代をつなぐアート発信、文化交流
星野
また、高齢者にとっても「生涯学習」ができるような機能の整備を検討しています。開発コンセプトの「育む」に関して、世代に関わらず、人々がゆとりを持って学び、知を育み、創造することのできる環境を整えていきたいですね。
内野
駅間地区の西側には、文化会館や図書館等の文化施設があります。2年前には図書館をリニューアルし、現在では年間70万人もの利用があります。これからは文化や芸術が満ち溢れる、文化発信のエリアとして、学生の皆さんから高齢者まで世代を超えて集まることのできる場となることを期待しています。
星野
やはり今後はハードだけでなく、ソフトも重要です。将来に向けてまちを育む、皆さんをつなぐ役割を、アートなどの文化に担わせたいと我々も考えています。駅間地区では、全体竣工までの約10年間にわたり、「GROWING」をテーマにアートによる情報発信を行っていきます。2016年は参加型イベント「ひかりのクローバー」を開催しました。一人一人がクローバーの葉を描き、夜はそれをライトアップすることで幻想的な庭が浮きあがるというイベントですが、本当にたくさんの方にご参加いただきました。2017年は、参加型イベント「わらアートプロジェクト 釈迦三尊像」を開催、高さ5メートルの巨大なわらアートが登場しています。こういったイベントが、まちに対する愛着心の種やコミュニティを醸成し、住む人、訪れる人の感性に響くまちの発信力を育てていくと思います。
内野
ぜひ継続していただきたいですね。アートや音楽など、やはり文化の力は人をつなぎ、まちを成長させると思います。
将来にわたって輝きつづけるまちへ
内野
2016年11月に、海老名駅から約400m南に位置する市役所周辺の市街化調整区域を、住居系の新市街地ゾーン、いわゆる「一般保留区域」と位置付けました。この「一般保留区域」は、さまざまな協議を整え計画的な市街地整備の実施が確実になった段階で、市街化調整区域から市街化区域に編入するものです。市街化区域になると、優先的に市街化を進めることになります。今後、関係者との調整を踏まえ、海老名駅を中心とした快適な住環境の創造につながる地域として、「住みたい 住み続けたいまち 海老名」を目指した施策を展開していく予定です。
星野
我々も今後、このまちの活力を維持していくために、住む方だけでなく、沿線中核駅を中心とした「昼間人口を増やしていく」施策を展開していく方針です。「沿線中核駅」は、地域資源が豊富な、いわゆる高いポテンシャルをもつ駅が多く、そのポテンシャルを伸ばすためにはお客さまの生活シーンである「職・住・商・学・遊」の機能を高めて沿線価値を向上させたり、地域が抱える社会課題へのソリューションを提供したりすることが重要だと考えています。
海老名地区の将来像は「究極のコンパクトシティ」。「職・住・商・学・遊」の生活に必要な機能がターミナル駅前にコンパクトに集約されるまちです。それも、都会にあるようなコンパクトシティではなくて、やはり海老名の地ですから、ゆったりとした、快適に住めるコンパクトシティですね。
郊外の持つ「ゆとり」と利便性を兼ね備えた「理想の暮らしの舞台」を創出し、それを維持していくことが目標です。その実現のために、当社の持つノウハウを最大限活用し、多面的な施策を実施していきたいと考えています。
内野
本当に心地よい暮らしがある、海老名らしさを活かした将来像ですね。海老名の良さは何かと、よく聞かれます。海老名市は、住んでいる方に「海老名っていいな」と思っていただけるだけでなく、海老名市から転出された方からも「海老名ってよかったね」と言っていただける。こんなまちは、なかなかないのではないでしょうか。交通の利便性、豊かな自然、子育て支援、安全・安心、そしてもちろん防災対策にも力を入れています。海老名の良さはたくさんありますが、心地よいまちで自分らしく暮らしていることは、「素晴らしい」とか「最高」とかいう言葉ではなく、こんな風に自然に、「なんかいいな」と思えるものなのだと思います。それが、「住みたい 住み続けたいまち」ということではないでしょうか。
星野
その通りだと思います。だからこそ今、成長著しい海老名の中心市街地における大規模プロジェクトは、これまでに小田急が培ってきたまちづくり事業の集大成になると思っています。
2027年、小田急線は開業100年を迎えます。この記念すべき年に向けて、まさに「鉄道×まちづくり」企業としての大きな一歩になると考えています。
このプロジェクトは建物を建設して終わり、というものではなく、将来にわたってまちの活力を維持させていくことを考えていく必要があります。そのためには、まちのメンテナンスはもちろん、魅力あるまちに成長させていくためのさまざまな取り組みを今後も行っていきたいと考えています。駅前という立地でありながら、ファミリー、オフィスワーカー、お買い物のお客さまをはじめ、カフェで過ごしたり映画を観たりなど、幅広い方々がそれぞれ思い思いの時間を過ごせるような、楽しく、賑わいのある、またゆったりと過ごせる、新しい未来のまちを創っていきたいですね。
そのためには当社だけではなく、ぜひとも地域の方と協働していきたいと考えており、海老名市にもご協力いただきながら進めていきたいと考えています。
内野
もちろんです。この輝きが将来にわたって続くよう、「住みたい 住み続けたいまち 海老名」を目指し、さまざまな施策に取り組んでまいります。
対談終了後に内野市長から星野社長に海老名市のイメージキャラクター「えび〜にゃ」がプレゼントされました。