フューチャー・ランゲージ=「ミライを語るコトバ」をみんなでつくり、理想の未来を実現しようという海老名ミライカイギ。地域への関わり方など新しい人生の楽しみ方が見えてくる50代、60代のアクティブ世代から、海老名市ならではの個人のニックネーム「EBi NAME(エビネーム)」というアイデアが飛び出しました。さて、後編ではどんなコトバが生まれるでしょうか。
「フューチャー・ランゲージ」とは
「自動車」という言葉ができる前、自動車は「馬なし馬車」と呼ばれていたそうです。「自ら動く車」という考え方がなかった当時の人々は、それを表す言葉を持っていませんでした。でも、もしも先に「自ら動く車があったらいいな」「それを『自動車』って呼ぶのはどう?」なんて会話をしていたら、「馬なし馬車」よりもイメージがふくらんで、自動車の進化は早まったかもしれません。「今ないもの」を表す共通の言葉をつくり、理想の未来をぐっと近づける。それが、フューチャー・ランゲージという考え方です。
ジェネレーター
*「ジェネレーター」とは、ティーチャー(教える人)でもファシリテーター(話を引き出す人)でもなく、「創り出す人」のこと。参加者と一緒にミライのコトバを考えます。
井庭 崇(いば たかし)
慶應義塾大学総合政策学部准教授。創造的活動を支援する「パターン・ランゲージ」の日本における先駆者であり、未来へ向けて言葉づくりからアプローチする新たな手法「フューチャー・ランゲージ」を提案。産学連携によるワークショップ等で、海老名市をはじめ全国の街づくりなどに携わる。著書に『パターン・ランゲージ:創造的な未来をつくるための言語』『プレゼンテーション・パターン:創造を誘発する表現のヒント』『旅のことば:認知症とともによりよく生きるためのヒント』『プロジェクト・デザイン・パターン』等
参加者
岡本 州弘さん
海老名市在住。東京生まれ。住宅メーカーに勤務した後、2013年に住宅購入の際のアドバイスを行うNPO法人を設立。
澤村 里美さん
綾瀬市在住。岐阜で生まれ、幼少時に神奈川へ。29歳の長男が独立し、3人の子育ても一段落。パート勤務。
田中 信行さん
綾瀬市在住。大阪生まれ。20年前より綾瀬で暮らす。仕事はシステムエンジニア。座っている時間が長いので休日はウォーキング。
山鹿 清美さん
綾瀬市在住。茅ヶ崎生まれ。夫の両親、兄家族とともに三世帯で暮らす。長女は同居、2人の息子は独立。パート勤務。
サポーター 慶應義塾大学 井庭崇研究会 ゼミ生
隅崎 明子
宗像 このみ
岡 柚希
1. つながることで、自分の世界を広げていきたい
井庭
前半で、「EBINA」プラス「NAME」、「EBI NAME(エビネーム)」という言葉が生まれました。お互いの距離を縮めるための、海老名ならではのニックネーム、面白いですよね。
田中
呼び名をつけると、親しくなりやすいんですよね。僕はダイビングをやっているんですが、仲間同士で苗字で呼び合うだけじゃつまらないんで、ノリでニックネームをつけたんですよ。日本人なのに「チャーリー」とかね。もう今では本名がなんだかわからなくなっちゃって(笑)。
宗像
逆に、外国人の方が日本人っぽい名前をつけるとかも面白そうです。
井庭
そうそう、うちの大学に「サブちゃん」って呼ばれている外国人の生徒がいますよ。
井庭
じゃあ、これはピンクの付箋に書きますね。はい、これで、海老名ならではの「ミライのコトバ」がひとつできました。
澤村
皆さんの発想、すごいですよね。私、何も考えない状態でここへ来ちゃったから…。
山鹿
私も今日は何も考えないまま、ここへ来ちゃいました(笑)。だから、皆さんの発想が素晴らしいなって。私はちょっと、社会から離れちゃったかなあと。やっぱり発想が狭くなっているのかなあって…。
井庭
なるほど。自分の発想や世界を広げたい、という感じはありますか?
山鹿
そうですね。ちょうど子どもも手が離れて、今は親の介護が始まる前で、自由な時間もありますし。社会とつながって、自分の世界を広げていきたいですね。
井庭
じゃあ次は、エビネームで人と人がつながっていく。そういった「場所」についても考えていきましょうか。
「EBI NAME(エビネーム)」から始まり、最初はちょっと堅い表情だった皆さんの発想がどんどん広がってきます。
2. 大学生が運営する!? 飲み屋街「Uni Bar City」
井庭
前半で出た、「大学生がやる飲食店」の名前は、どうですか?澤村さん、何か浮かびますか?
澤村
そうですね…。「ちょい飲み屋台」? 仕事帰りにちょっと飲める店っていうことで。
井庭
山鹿さんが言っていらした、「オープンで、気軽な感じ」がしますね。
田中
あとは、学生がやっているということを伝えたいな。例えば、「学生街の酒場」。うーん、これじゃあ単純か…。「Uni Bar(ユニ・バー)」っていうのは、どうですか?
井庭
「ユニバーシティ」の「Bar」ですね(笑)。「Uni Bar City」にしてもいいんじゃないでしょうか? Uni Barの街。これも書いておきましょう。
田中
いいですね。ずらっと立ち飲み屋が並んでいるのがいいな。屋台村みたいにね。一軒だけじゃダメですね、集客ができないから。
澤村
「Uni Bar City」!うん、すごく賑やかで楽しそうですね!
田中
海老名は大学がないから、学生と、僕みたいな親父が共に遊べるコミュニティになるといいな。下北沢みたいなイメージ。下北沢って、お芝居でいろいろな世代がつながっているでしょう。そういうコミュニティに憧れるな。
岡本
学生としても、海老名に来たら知識を持っている大人と楽しい会話ができるっていうことで、ふらっと遊びにくるんじゃないの? そういうの、いいよね。
田中
リタイアした高齢者も、ここで一緒に何かやってみるとかね。
井庭
最近の大学は生涯学習にも力を入れていますからね。いろいろな世代の学生がここで交流できると思います。可能性がどんどん広がりますね。
ピンク色の付箋に書くのは、「ミライのコトバ」。アクティブな世代ならではのアイデアが、新しいコミュニティのスタイルを生み出していきます。
3. マンションをつなげる「星牧場」「アパ友」、そして…
井庭
澤村さんが出した「星を見る場所」。これはどうですか?タワーマンションを開放して、屋上で星を見るイベントなどを開催するという。
井庭
天の川テラス、星空展望台…。うーん、なんか普通だな。
澤村
それ、いいですね!素敵です。自分の家で星を飼って、育てている感じ。星牧場のために、そのマンションを買いたくなります(笑)。
岡
「牧場」って、開放的な感じですよね。それで考えたんですけど、いろいろなマンションがそれぞれの特長を生かして、つながっていくのはどうでしょうか。ジムやプールがあるところもあるし…。
隅崎
ひとつのマンションでその機能を独占するんじゃなくて、ここは屋上から見る星空、ここはプールとか、それぞれの魅力をみんなで共有する、コミュニティ同志が提携するっていうことですね。
澤田
じゃあ、「アパ友」っていうのはどうでしょう? アパート同士がつながっていくということで。
井庭
おおー!いいですね。これはピンクの付箋に決定ですね(笑)。
井庭
じゃあ、コミュニティの方向で、もうちょっと考えていきましょうか。山鹿さんから、ペットを遊ばせる場所、というのがありましたね。
山鹿
はい、交流の場にもなるドッグランとか。ワンちゃんの足を洗うスペースとか、トイレもあると便利ですね。
井庭
動物のフンも、自然に返せば肥料になるんですけどね。昔は草むらみたいなところがたくさんあったから何でもありで、そこでペットが用を足しても何にも言われなかった。でも、今はそういう場所はダメですからね。子どもたちを遊ばせられないし。
岡本
じゃあ、垂れ流せるってことで、「垂れ流しパーク」でいいんじゃない?
岡本
ダメだな。下世話なもんしか浮かばないな(笑)。
宗像
どんどん衛生的になっていく時代のなかで、たくましく生きている「垂れ流しパーク」!
澤村
違うんです、不衛生じゃないんです!最新鋭のシステムにするんですよ。臭くないように。
井庭
なるほど、それはすごいです。名前を採用するかはともかくとして!(笑)
何度も笑いが巻き起こり、どんどん盛り上がっていくミライカイギ。星やペットなど、好きなことから自由に発想していきます。
4. アクティブな世代が活躍する!「いい爺レンタル」
井庭
「ミライのコトバ」がたくさん出ましたね。海老名をこんな街にしていきたいという皆さんの想いが、パワフルな言葉を生み出したと思います。
澤村
面白かったですね(笑)。皆さん、やっぱりすごい。
岡本
うん。言葉から発想していくっていう、このフューチャー・ランゲージはなかなか面白いね。
井庭
岡本さんは建築のお仕事をされていましたよね。フューチャー・ランゲージは建築でも活用されていますよ。最初にも少しお話しましたけど、今日のこの場所(リコー フューチャーハウス)は、「ベビーカーが通りやすい通路」という声から「ベビーカーワイド」という言葉をつくり、設計しましたから。
田中
こんなふうにみんなで面白いアイデアをどんどん出して、若い人も、親父も、お年寄りも活躍できる場所にしたいね。若者と仲良くなって起業できたりしたら、面白い。
岡本
俺は、縁の下の力持ちというスタンスがいいかな。そのほうがやりやすい気がする。そういえば、おじさんをレンタルするサービスってあるよね。
岡本
シルバー人材センターとかもあるけど、報酬が少ないんだよね。せっかく豊富なノウハウを生かして活躍できる人がいるのに、もったいない。その人たちが活躍できる場を、名前から考えてみようよ。
田中
はいよ!「いい爺(じい)レンタル」、どうですか?
井庭
最後の最後まで、すごくいいキーワードが出ましたね!今日生まれた「ミライのコトバ」を、これからたくさんの人に向けて発信していけたらと思います。ということで、今日はありがとうございました!
長時間の会議ですっかり打ち解けた皆さん。今回も、海老名市の未来を描くたくさんの「ミライのコトバ」が生まれました!
プレシニア編で生まれた「ミライのコトバ」
「EBI NAME(エビネーム)」…海老名市民になると同時に届け出るニックネーム
「Uni Bar City」…各大学の学生たちが、経済学の勉強を兼ねて運営する飲み屋街
「星牧場」…タワーマンションの屋上を開放、星空を楽しむイベントなどを開催する場
「アパ友」…複数のマンションやアパートの施設・機能を共有するコミュニティ
「いい爺(じい)レンタル」…ノウハウを持った高齢者に仕事を依頼できるサービス
海老名ミライカイギは、今後もいろいろな方に参加していただき、シリーズで展開していきます。どうぞご期待ください!
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