小田急線海老名駅とJR相模線海老名駅間の広大なエリアで生まれる、新しいまち「ViNA GARDENS(ビナガーデンズ)」。今、人気が高まっている海老名市が、このプロジェクトによってさらにどんな魅力を高めていくのか、将来はどんな暮らしが待っているのか、内野 優海老名市長と、小田急電鉄 星野 晃司取締役社長が語り合うスペシャル対談の前編をお届けします。【2017年9月14日(木)対談】
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若い世代を支える子育て施策。複々線化も完成間近
小田急電鉄取締役社長 星野 晃司(以下、星野)
こんにちは。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
海老名市長 内野 優(以下、内野)
こちらこそ、よろしくお願いいたします。
星野
海老名市は、今や人口13万人を超える都市となりましたね。
内野
そうですね。今、神奈川県内で特に元気なまちと言われています。「活力ある都市ランキング」(*)でも県内第2位になるなど、非常に注目されているまちです。なかでも海老名駅周辺は小田急線を含む3路線が乗り入れするターミナル駅があり、近年は圏央道が開通するなど交通利便性にも優れています。商業施設も充実する一方で、市の西側には相模川が流れ、南部には田園風景が広がるなど、自然環境にも恵まれています。
星野
子育て世代にも支持される環境が整っていますよね。
内野
はい。海老名市ではこのようなポテンシャルを最大限活かすとともに、まちづくりの指針として「住みたい 住み続けたいまち 海老名」を掲げ、ハード、ソフト両面においてさまざまな施策を積み重ねてきました。市の子育て施策としては、中学生までを対象としたこども医療費の無償化や、待機児童解消に向けた取り組みなどを行ってきました。
人気が高まることで生まれる新たな課題、例えば地価が上昇傾向にあることや、家賃相場が近隣市と比較して高い状況にあることに対しても、学生を対象とした「若者(学生)定住促進家賃補助事業」や、若者を対象とした「若者定住促進奨学金返還補助事業」を実施して対策を進めています。海老名に暮らすこと、家を持つことが、若い世代にとってハードルの高いものとならないようにしていきたいですね。
星野
当社でも、列車の増発や長編成化をはじめとする輸送力の増強で、沿線に住む方々の増加にお応えしてきました。1989年からは都心部に近い近郊区間で複々線化事業に着手し、東北沢~和泉多摩川間で工事を進めてきました。すでに世田谷代田~和泉多摩川間が完成し、残る下北沢地区については、2018年3月の複々線化を目指して工事を進めているところです。
内野
複々線化が完成すると、いろいろな効果が見込まれますね。
星野
はい。私たちは大きく4点を実現したいと考えています。
1つ目が「混雑緩和による快適な輸送環境の提供」です。朝のラッシュピーク1時間あたりの列車本数を現行の27本から36本へ、約3割増やすことで、最も混雑する区間の混雑率を現状の192%から150%程度に下げることができます。これは「新聞がゆったりと読める」くらいのゆとりが生まれるということです。
2つ目が「所要時間短縮による都心方面へのアクセス向上」です。新宿や大手町方面への所要時間をさらに短縮します。朝ラッシュピークの海老名から新宿への所要時間は9分短くなります。
3つ目が、「千代田線直通列車増発による都心中心部への利便性の拡大」。増発可能となる列車の多くを、千代田線直通とする予定です。今、ビジネスの拠点としては新宿もさることながら、霞が関、大手町などの需要も高まっているためです。
そして4つ目が「着席サービスの向上」です。昨今の通勤時間帯における着席ニーズの高まりに応え、全席指定制の特急ロマンスカーを増発していきます。
内野
それは大いに期待できそうですね。ところでロマンスカーは、2016年3月から海老名駅に停車することとなりましたね。これは長年にわたる市民の願いが実現したものでした。これにより、新宿方面だけでなく、箱根方面へのアクセスも向上しました。
星野
海老名からは、箱根も江の島も1時間以内で行けますね。オン・オフ、どちらも快適に過ごせるのが、この地域の魅力だと思います。
まちをつなげる! 海老名駅駅間地区開発
内野
小田急小田原線が開業した90年前、昭和2年(1927年)の海老名の人口は1万人で、現在の海老名駅周辺は、見渡す限りの田園地帯でした。今は、13万人を超える都市となり、田園地帯であった海老名駅周辺は、マンション、商業施設が建ち並び、久しぶりに海老名駅を利用された方は、その変貌ぶりに驚かれます。
星野
そうですね。これまで当社では海老名駅の改良工事のほか、東口地区における大型商業施設の「ビナウォーク」や複合商業施設「ビナフロント」の開発、賃貸・分譲マンション等の住宅供給などを通じて、地域の発展に努めてきました。
内野
やはり2002年にビナウォークが完成したことがきっかけとなり、多くの方が海老名を訪れるようになったと思います。ビナウォークのオープンと同時期に、東口自由通路が供用開始しましたね。これにより、歩行者の安全性や利便性も大きく向上しました。
星野
今後もさらなる成長が見込まれると思います。この状況を踏まえ、我々はこのエリアを周辺からの誘引力がある「沿線中核駅」と位置づけています。そして、地域の核に相応しいまちづくりを実現しようというのが、小田急線海老名駅とJR相模線海老名駅の間、「海老名駅駅間地区」の開発です。
内野
海老名駅西口の土地区画整理と海老名駅駅間地区の開発は課題のひとつで、海老名市でも「海老名駅東西一体のまちづくり」を、重点施策の一つとして位置付けて取り組んできました。
2008年には、県と市・小田急電鉄により、小田急小田原線が高架化され、中心市街地の交通渋滞の解消に寄与しています。2009年には優先的に市街化を進める「市街化区域」に駅間地区を編入し、2010年には駅舎部自由通路が完成、2015年10月には西口地区の土地区画整理事業によって新しいまち「扇町」が誕生し、駅周辺に新たな賑わいをもたらしています。
同時に供用開始した駅間部自由通路は、駅東西の人の流れを大きく変えました。2016年4月には、海老名駅駅間地区の地区計画を変更しています。
星野
早いですよね。ものすごくスピード感がある。従来の行政より決断の速さを感じます。
内野
これは、中心市街地にふさわしい東西一体の市街地整備を進めていくという、小田急電鉄・海老名市の将来ビジョンが一致した結果であると考えています。
内野
ですから、今後の海老名市のさらなる発展につながっていくものとして、「海老名駅東西一体のまちづくり」の中核となる駅間地区の開発に大いに期待しているところです。
開発コンセプトは、「憩う・くらす・育む」
星野
海老名駅駅間地区のエリア名称は、「ViNA GARDENS(ビナガーデンズ)」に決定しました。3万5,000平方メートルという広大な土地を、「くらしエリア」と「賑わい創出エリア」の2つのゾーンに分け、2025年度の事業完成に向けて、今まさに、魅力あるまちづくりを進めています。タワーマンションやサービス付き高齢者向け住宅等の多様な住宅の供給、周囲の既存施設との差別化を図った商業施設やオフィスに加え、地域の交流を育むホテル・フィットネスクラブ等のサービス施設も計画しています。
内野
駅周辺の賑わいは一段と増していきそうですね。
星野
そうですね。最初の竣工物件として既にコンビニエンスストアが開業し、賑わい創出エリアの商業棟については、飲食店舗を中心とした「TERRACE(テラス)」として2017年11月に開業、分譲マンションも2017年9月の着工とともに、販売に向けた告知を開始しました。
内野
「ViNA GARDENS」の開発コンセプトは、「憩う・くらす・育む」でしたね。
星野
はい。キーワードの「憩う」は、緑や水の豊かな環境の中で、人々が憩うことのできる場所を創出する、ということです。そうすることで、憩いの場所はいつも人々の賑わいであふれ、そこから人と人とのつながりが生まれます。「くらす」は、人々が安心、安全、快適にくらすことのできる環境を整えるということです。快適な環境があるからこそ、より多くの人がこのまちで生まれ、このまちに愛着を持って、成長していく。その繰り返しにより、まちの現在と未来をつないでいくことができます。そして「育む」、人々がゆとりを持って学び、知を育み、創造することのできる環境を整えることで、まちの文化を育み、文化のつながりを生み出していきます。
この開発により、エリア周辺や海老名市の皆さんの暮らしがどのように変わっていくのか、ぜひ多くの方に向けてお伝えしていきたいですね。
*「活力ある都市ランキング」 日経ビジネス2016年1月25日号